更生手続開始決定の取消しを求める理由を詳細に主張
令和8年6月8日、更生会社である株式会社トーシンホールディングスの株主である石田ゆかり氏は、東京高等裁判所に対し、会社更生手続開始決定を不服として「抗告理由書」を提出しました。
本書面では、会社更生手続開始決定そのものが違法かつ不当であるとして、その取消しを求めています。
以下、その主な内容を整理してご紹介します。
抗告の趣旨
抗告人は東京地方裁判所が令和8年5月8日に決定した会社更生手続開始決定について、
- 更生手続開始決定を取り消すこと
- 更生手続開始申立てを棄却すること
を求めています。
1 会社更生申立ては「株主の意思」を無視して行われた
抗告理由書では、会社更生手続開始の直前まで株主総会開催に向けた準備が進んでいたことが詳しく記載されています。
当時、監査法人による監査意見不表明を受け、経営体制を刷新するため、
- 代表取締役の解任
- 新たな取締役の選任
を目的とした臨時株主総会の開催が予定されていました。
しかし、その総会開催のわずか20日前に会社更生申立てが行われたことによって、株主総会による取締役の選解任の実効性が失われることになりました。
抗告理由書では、
株主による経営改善の機会が奪われた
と主張しています。
2 取締役会決議は違法であると主張
会社更生法では、会社更生申立ては会社の「重要な業務執行」に該当するとされます。
そのため、適法な取締役会決議が必要になります。
しかし本件では、
- 緊急動議という形で議案化された
- 十分な資料が事前配布されなかった
- 十分な審議時間も与えられなかった
など、取締役会の手続に重大な問題があったとしています。
3 申立てに関与した取締役には利益相反があると指摘
抗告理由書では、会社更生開始後には会社の経営権や財産管理権が管財人へ移る一方、
現経営陣は自らの責任追及を免れる立場になり得ることを指摘しています。
そのため、
申立てに賛成した一部取締役については会社法上の「特別利害関係人」に該当する可能性があり、
その議決権は認められないと主張しています。
4 更生原因は存在しないと主張
会社更生制度は、
- 支払不能のおそれ
- 事業継続が著しく困難
などの場合に利用される制度です。
しかし抗告理由書では、
- 金融機関との取引は継続していた
- 長期借入契約により資金繰りは確保されていた
- キャッシュフローも確保されていた
などとして、
会社更生法上の「更生原因」は存在しないと主張しています。
5 会社更生計画を実現できる見込みもない
抗告理由書では、
更生計画を策定するには、
- 金融機関
- 取引先
- 株主
など多くの関係者の協力が不可欠であると指摘しています。
しかし現状では、
- 信用が低下していること
- 現経営陣では支援を得ることが困難であること
から、更生計画そのものの実現可能性が乏しいとしています。
6 申立ての目的は「会社再建」ではなく経営陣の保身であると主張
抗告理由書の中で最も強く主張されている点が、
今回の会社更生申立ては、
会社を再建することではなく、
- 株主総会による取締役解任を回避すること
- 現経営陣が経営権を維持すること
を目的としていたという点です。
その根拠として、
- 株主総会直前の申立て
- 監査法人からの指摘
- 株主による取締役交代の動き
- 会社更生開始後も現経営陣が一定期間経営に関与できる制度
などが挙げられています。
7 現経営陣に対する責任追及の必要性
抗告理由書では、
現経営陣について、
- 不動産取引
- ハラスメント問題
- ガバナンス上の問題
など複数の事項を挙げ、
今後、役員責任追及の対象となる可能性があると主張しています。
そのため、
責任追及を免れる目的で会社更生制度を利用することは制度趣旨に反すると述べています。
抗告審の暫定処分を上申
抗告理由書では、
高裁の判断が出るまでの間、
- スポンサー選定
- 第三者割当増資
- 新株予約券の発行
- その他資本政策
などが進められれば回復困難な損害が生じるとして、
これらの手続を停止する暫定処分を上申しています。
企業価値保全委員会より
今回提出された抗告理由書では、会社更生手続開始決定に至る経緯や、その適法性について、多岐にわたる法的主張が展開されています。
企業価値保全委員会では、株主・取引先・従業員など多くの関係者にとって重要な資料であると考え、その内容を継続してお伝えしてまいります。
※本記事は、令和8年6月8日付「抗告理由書」の内容を要約したものであり、裁判所の判断を示すものではありません。