「会社更生手続は既に役割を終えており、速やかな取消しを求める」
令和8年7月10日、抗告人は東京高等裁判所に対し、新たな事情を踏まえた上申書を提出しました。
この上申書では、会社更生手続開始決定後に生じた重要な事実により、会社更生手続を継続する法的・実質的な必要性は既に失われていると主張しています。
さらに、更生手続の継続そのものが会社及び株主に回復困難な損害を与え続けているとして、東京地方裁判所による会社更生手続開始決定を速やかに取り消し、更生手続開始申立てを棄却するよう求めています。
新たに判明した重要な事実
会計監査人が「無限定適正意見」を表明
上申書では、令和8年7月14日付の第40期定時株主総会招集通知において、会計監査人(監査法人アリア)が第40期連結計算書類に対し無限定適正意見を表明したことが最大の新事情として挙げられています。
会社更生手続開始時には、会計監査意見の問題が手続開始の重要な事情の一つとされていました。
しかし現在では、
- 会計監査人による無限定適正意見が取得されたこと
- 財務内容が客観的に確認されたこと
により、更生手続開始の前提事情は既に消滅したとしています。
約11億2,900万円の資産超過
監査済み連結貸借対照表によれば、更生会社は約11億2,900万円の資産超過となっています。
これは、
「破産手続開始の原因となる事実が生ずるおそれ」
が存在しないことを客観的に示すものであり、更生手続開始の法的要件を欠く状況になっていると主張しています。
定時株主総会も通常どおり開催予定
さらに会社は令和8年7月30日に定時株主総会を開催予定であり、
- 監査済み計算書類が完成していること
- 通常どおり株主総会を開催できる状態にあること
からも、更生手続を必要とするような経営危機にはないと説明しています。
更生手続は既に役割を終えている
上申書では、更生手続開始時に裁判所が重視した事情は既に全て解消されたと指摘しています。
具体的には、
- 会計監査の問題
- 財務面の問題
- ガバナンス上の問題
はいずれも正常化しており、更生手続が果たすべき役割は終了したとしています。
また、その正常化は会社更生手続によって実現したものではなく、株主による経営改善やガバナンスの回復による成果であるとも主張しています。
更生手続継続の目的は「支配権維持」に過ぎないと指摘
上申書では、会社更生手続を継続する唯一の効果として、
株主総会で解任された旧経営陣による支配権を維持すること
になっていると強く指摘しています。
令和8年5月28日の株主総会では、株主の圧倒的多数により石田雅文氏は取締役を解任されました。
しかし、会社更生開始決定によって財産管理権限が管財人へ移行し、その管財人に石田氏が就任したことで、
- 株主総会の意思
- 株主による経営判断
が事実上無効化されていると主張しています。
株主権を形骸化させる会社更生手続
さらに上申書では、
役員の選任・解任は会社法上、株主総会の専権事項であり株式会社制度の根幹であるにもかかわらず、
会社更生手続がその効力を実質的に失わせる手段として利用されているのであれば、それは制度趣旨に反するものであると指摘しています。
経営陣の支配権維持は会社更生法の目的ではなく、更生手続開始原因にも該当しない以上、更生手続継続の理由は説明できないと述べています。
更生手続の継続により企業価値が毀損
上申書では、更生手続を続けることによる具体的な損害についても言及しています。
トーシングループは、
- 移動体通信事業
- 不動産事業
- リゾート事業
を一体として運営してきました。
しかし、更生手続の下でスポンサー選定や事業売却が進められれば、
- グループ企業の分断
- 不動産売却
- 株式価値の希薄化(最大300%の第三者割当増資)
- 企業価値の毀損
が生じ、仮に後日会社更生手続が取り消されたとしても、元の状態への回復は極めて困難になると警鐘を鳴らしています。
結論
今回提出された上申書では、
- 無限定適正意見の取得
- 約11億円超の資産超過
- 通常どおり株主総会を開催できる状況
という新たな事実により、会社更生手続開始の原因は既に存在しないと主張しています。
さらに、更生手続の継続は株主総会の意思を無力化し、企業価値を毀損し続ける結果となっているとして、
東京高等裁判所に対し、会社更生手続開始決定を速やかに取り消し、更生手続開始申立てを棄却するよう求めています。