これまでの経緯
トーシンホールディングス(以下「会社」といいます。)では、2025年11月22日、東京証券取引所により特別注意銘柄に指定されました。会計監査人の監査意見が得られない状態が続き、株主からは、当時の代表取締役の下での経営体制に疑義が示されていました。
株主である株式会社ジェットは、会社法に基づき臨時株主総会の招集を請求しましたが、会社の取締役会がこれに応じなかったため、名古屋地方裁判所に招集許可を申し立て、2026年3月31日、同裁判所は招集を許可する決定をしました。これにより、当時の代表取締役石田雅文氏の取締役解任等を議題とする臨時株主総会が、同年5月28日までに開催されることが確定しました。
ところが、その総会開催予定日の20日前である2026年5月8日、会社は東京地方裁判所に会社更生手続開始の申立てを行い、同日中に開始決定がされました。会社の公表によれば、この申立ては同日の取締役会の決議に基づくものであり、開始決定により、当時の代表取締役であった石田雅文氏と、申立ての代理人であった弁護士とが、会社の管財人に選任されました。会社更生手続の下では、会社の事業経営権と財産の管理処分権は管財人に専属します。
2026年5月28日、裁判所の許可に基づく臨時株主総会は予定どおり開催され、石田雅文氏を取締役から解任する議案が圧倒的多数で可決されました。しかし、同氏は、管財人として引き続き会社の経営権を有しています。
株主である石田ゆかり氏及び株式会社ジェットは、この会社更生手続開始決定を不服としてそれぞれ即時抗告を申し立てましたが、東京高等裁判所は2026年7月28日付でこれらを棄却しました。会社の2026年8月3日付適時開示によれば、同裁判所は、その理由の一つとして、「会社更生手続を選択し、更生担保権者の権利行使の抑制を図るとともに、株式会社ジェットないし当社の元代表取締役である石田信文氏の株主としての影響力の抑制を図ることについては一定の合理性がある」と判断したとされています。
また、同開示によれば、管財人の解任を求める申立ては、石田ゆかり氏のほか会社グループの従業員4名からも行われましたが、いずれも棄却されました。さらに、2026年6月5日開催の会社の取締役会において、管財人2名の解任を裁判所に申し立てることが決議されたにもかかわらず、会社によるその申立ては行われていないことが確認されています。
なお、会社の2026年8月3日付開示によれば、2026年4月期の内部統制報告書において「開示すべき重要な不備」があり、財務報告に係る内部統制は有効でない旨が記載されており、有価証券報告書における監査意見は限定付適正意見とされています。
不服申立て(3件)の概要
以上の経過を経て、トーシンホールディングスの会社更生手続を巡る一連の裁判について、株主である石田ゆかり氏(以下「申立人」といいます。)は令和8年7月31日付で最高裁判所の判断を求め、「特別抗告」および「抗告許可申立て」を行いました。内訳は、①会社更生手続開始決定に対する特別抗告、②同決定に対する抗告許可の申立て、③管財人解任申立てを棄却する決定に対する特別抗告の3件です。①及び②は東京高等裁判所に、③は東京地方裁判所に提出するものとされており、①及び③については最高裁判所が、②については東京高等裁判所が抗告を許可した場合に最高裁判所が、それぞれ審理することとなります。提出された書面では、東京高等裁判所の決定について、憲法や法令の解釈、会社更生法の運用に関わる重要な法律問題があるとして、最高裁判所による判断を求めています。
最高裁に判断を求める理由
今回の申立てでは、単に個別事件の判断を争うものではなく、会社更生法の運用に関する重要な法的論点について、最高裁判所として統一的な判断を示す必要があると主張しています。
抗告許可申立書(上記②)では、原決定が判断した会社法及び会社更生法上の規定について、最高裁判所の判例が存在しない重要な法律問題であるとし、その解釈を明らかにする必要があるとしています。具体的には、会社法第369条第2項所定の「特別の利害関係」の意義及び会社更生法第41条第1項第4号所定の「不当な目的」の解釈が、いずれも最高裁判所の判例が存しない法令の解釈に関する重要な事項である旨を記載しています。
①② 開始決定に対する最高裁への申立て
会社更生手続開始決定に関する事件では、東京高等裁判所の決定について憲法の解釈の誤りその他憲法の違反があるとして、最高裁判所へ特別抗告を申し立てました。あわせて、同決定については、抗告許可の申立ても行っています。
申立書では、原決定の破棄と、相当な裁判を求めています。また、詳細な理由については、後日提出する理由書で主張するとしています。
③ 管財人解任申立てについても最高裁へ
管財人解任申立てに関する事件についても、申立人により、最高裁判所へ特別抗告が申し立てられました。
申立書では、東京地方裁判所による管財人解任申立て棄却決定について、憲法の解釈に誤りがあることを理由として、最高裁の判断を求めています。さらに、この決定は会社更生法上、通常の即時抗告が認められない決定であるため、特別抗告による審査を求めるものとしています。
今後について
今回の申立てにより、会社更生手続に関する重要な法的論点について、最高裁判所の判断が求められることになります。
企業価値保全委員会では、今後も手続の進展や裁判所での審理状況について、確認できた内容を適時お知らせしてまいります。
本記載は、係属中の裁判手続における申立人側の主張の概要をお伝えするものであり、裁判所の判断を予測するものではありません。経緯に関する記載は、会社が公表した適時開示等に基づくものです。