株主兼元取締役が東京地裁に共同管財人の解任を申立て
株式会社トーシンホールディングスの株主であり元財務担当取締役である石田ゆかり氏は、令和8年6月26日、東京地方裁判所に対し、更生会社の共同管財人である石田雅文氏および粟田口太郎弁護士の解任を求める申立てを行いました。
本申立てでは、会社更生法上の管財人としての適格性や中立性に重大な疑義があるとして、両名の解任と、新たな第三者管財人の選任を求めています。
申立人の立場
申立人である石田ゆかり氏は、令和8年4月時点でトーシンホールディングス株式305,200株(持株比率4.72%)を保有する株主であり、会社更生手続開始時点では取締役の地位にありました。さらに、令和8年1月まで財務担当取締役として経営に携わっていたことから、申立書では「更生手続開始に至る経緯や当時の経営陣の実態を直接知る立場にあった」と主張しています。
本件更生手続の特殊性
申立書では、本件会社更生手続が一般的な倒産案件とは異なる特徴を持つことを強調しています。
管財人が公表した再建計画によれば、
- 現時点で資産超過状態にあると認識している
- 100%減資は予定していない
- 金融機関には元本・利息とも全額返済する方針
- 商取引債権も全額弁済する方針
- 上場維持を前提としている
とされています。
そのため、本件では株主の議決権が消滅せず、スポンサー選定や第三者割当増資によって将来の支配権構造が大きく左右されることから、管財人には極めて高度な中立性が求められると主張しています。
石田雅文管財人に対する解任請求の内容
申立書では、石田雅文氏について会社更生法第67条第3項および第68条第2項に該当すると主張しています。
1. 自らが責任追及の対象となり得る立場
申立書によれば、石田雅文氏は更生手続開始前まで代表取締役を務めており、複数の法的紛争の当事者となっています。
具体的には、
- 元取締役からの損害賠償請求訴訟
- 従業員によるパワハラ・違法出向等を理由とする訴訟
- 不動産売却に関する取締役会決議欠缺を巡る仮処分申立て
などが挙げられています。
申立人は、これらが将来的な役員責任査定の対象となり得るものであり、その当事者が管財人として自らを調査する立場にあること自体が制度上不適切であると主張しています。
2. 株主総会決議との関係
令和8年5月28日に開催された臨時株主総会では、
- 石田雅文氏の取締役解任
- 平塚栄氏の取締役選任
が可決されたとされています。
しかし申立書によれば、令和8年6月23日時点でも役員変更登記が行われておらず、登記簿上は依然として石田雅文氏が代表取締役として記載されていると指摘しています。
申立人は、この状況が株主意思の軽視であり、管財人の中立性への重大な疑念を生じさせると主張しています。
粟田口太郎管財人に対する解任請求の内容
申立書では、共同管財人である粟田口太郎弁護士についても、中立性・独立性に重大な問題があると主張しています。
1. 申立代理人と管財人の兼任問題
申立書によれば、粟田口弁護士は、
- 更生会社の顧問的立場にあった
- 更生手続開始申立ての代理人を務めた
- 再建計画の策定に関与した
とされています。
そのうえで、申立書は、
「会社更生手続を設計・遂行した側の弁護士が、その後に管財人として申立ての妥当性や経営陣の責任を検証することは自己審査にあたり、中立性を欠く」
と主張しています。
2. スポンサー選定への懸念
再建計画ではスポンサー選定や第三者割当増資が予定されており、既存株主の議決権は最大300%程度希釈化される可能性があるとされています。
申立書では、粟田口弁護士が従前から経営陣側と密接な関係にあったことから、スポンサー選定において中立的な判断が期待できないと指摘しています。
更生手続開始そのものへの疑問
申立書では、管財人の適格性だけでなく、更生手続開始の前提自体にも疑問を呈しています。
主な主張は次のとおりです。
- 会社は資産超過状態にある
- 金融機関14行は全額返済を受ける計画となっている
- 商取引債権も全額弁済予定
- 営業利益を継続的に計上している
- 私的整理で対応可能だった
というものであり、会社更生手続開始原因が存在しなかった可能性があると主張しています。
さらに、経営陣解任を議題とする臨時株主総会の開催予定日の20日前に更生手続開始申立てが行われたことから、株主権行使を阻害する目的があったのではないかとの主張も展開されています。
申立人が裁判所に求めていること
申立人は東京地方裁判所に対し、
- 石田雅文氏の管財人解任
- 粟田口太郎弁護士の管財人解任
- 両名と利害関係を有しない独立した第三者管財人の選任
を求めています。
企業価値保全委員会の見解
本件申立ては、会社更生手続における管財人の中立性・独立性という極めて重要な論点を提起するものです。
特に、資産超過を前提とし上場維持を目指すという異例の更生案件においては、スポンサー選定や資本政策が既存株主の権利に重大な影響を与えるため、管財人の公正性は手続全体の信頼性を左右します。
今後、裁判所が本申立てをどのように判断するのか、その動向が注目されます。