2026/6/15|東京高等裁判所に即時抗告

石田ゆかり氏が会社更生手続開始決定の取消しを求める抗告理由書を提出

令和8年6月8日、株式会社トーシンホールディングスの株主であり、会社更生手続開始決定時点において取締役でもあった石田ゆかり氏は、東京高等裁判所に対し、会社更生手続開始決定の取消しを求める抗告理由書を提出しました。  

本抗告では、令和8年5月8日に東京地方裁判所が下した会社更生手続開始決定について、その申立て自体に重大な法的瑕疵があり、また会社更生法上必要とされる要件を満たしていないとして、更生手続開始決定の取消しを求めています。  

抗告理由書では、単に経営判断の妥当性を争うものではなく、

  • 会社更生申立ての手続そのものの適法性
  • 更生原因の有無
  • 株主権保護の観点
  • 現経営陣による申立権の濫用の有無

といった会社更生手続の根幹に関わる問題が指摘されています。  

抗告人の立場

石田ゆかり氏は、更生会社の発行済株式総数の約4.72%を保有する株主であり、会社更生手続開始決定時には取締役の地位にもありました。  

抗告理由書では、会社更生手続開始によって、

  • 株主の権利が大きく制限されること
  • 既存株主の議決権が大幅に希薄化される可能性があること
  • 取締役としての監督権限が失われること

などから、株主および取締役双方の立場において重大な不利益を受けるため、即時抗告を行う正当な利害関係を有すると主張しています。  

本件に至る経緯

抗告理由書によれば、トーシンホールディングスは令和7年以降、監査法人から有価証券報告書等について意見不表明を受けるなど厳しい状況に置かれていました。  

その一方で、最大株主である株式会社JETは、当時の代表取締役であった石田雅文氏の経営責任を問題視し、取締役解任および新取締役選任を目的とする臨時株主総会の開催を求めました。  

しかし、会社側は株主総会の開催請求に応じず、最終的に株式会社JETは名古屋地方裁判所へ招集許可を申立てました。裁判所はこれを認め、令和8年5月28日に臨時株主総会が開催されることが決定していました。  

ところが、その株主総会開催予定日のわずか20日前である令和8年5月8日、会社更生手続開始申立てが行われ、同日中に会社更生手続開始決定が下されました。  

取締役会決議の重大な問題点

抗告理由書で最も強く主張されている点の一つが、会社更生申立てを決定した取締役会決議の適法性です。  

会社更生手続開始申立ては、会社の経営権や財産管理権を管財人へ移転させる極めて重大な意思決定であり、本来であれば十分な準備と議論を経たうえで取締役会決議を行う必要があります。  

しかし、本件では事前に議題として通知されることなく、取締役会当日に「緊急動議」として突然上程されたとされています。

さらに、

  • 他の取締役への事前説明がなかったこと
  • 更生申立ての必要性について協議が行われていなかったこと
  • DIPファイナンス契約や各種申立てについても事前共有がなかったこと

などが指摘されています。  

抗告人側は、このような重要事項を緊急動議で決議すること自体が許されず、取締役会決議は無効であると主張しています。  

利益相反のある取締役が議決に参加したとの主張

抗告理由書では、当時の代表取締役である石田雅文氏自身が、会社更生開始後に管財人へ選任されることを前提として議決に参加したことも問題視されています。  

会社更生開始後は経営権や財産管理権が管財人へ集中し、管財人には報酬請求権も発生します。

そのため、石田雅文氏は当該議案について重大な個人的利害関係を有しており、本来であれば議決に参加できない「特別利害関係取締役」に該当すると主張されています。  

仮に石田雅文氏を議決から除外すると、賛成票は過半数に達せず、会社更生申立てを決定した取締役会決議は成立しなかったと主張されています。  

更生原因は存在しなかったとの主張

抗告理由書は、会社更生法上必要となる「更生原因」が存在していなかったと指摘しています。  

特に、

  • 更生会社自身が「資産超過状態」であると認識していたこと
  • 申立て時点で純資産が約7億4,000万円のプラスであったこと
  • 債務超過の状態ではなかったこと

などを挙げています。  

さらに、金融機関による期限の利益喪失や回収措置は行われておらず、銀行団との協議も継続されていたことから、「支払不能」や「事業継続に著しい支障が生じるおそれ」も認められないと主張しています。  

株主総会を回避するための申立てだったのか

抗告理由書の中で最も重要な論点として挙げられているのが、会社更生手続開始申立ての目的です。  

臨時株主総会では、石田雅文氏の取締役解任議案が可決される可能性が極めて高い状況にあったとされています。

実際に、会社更生手続開始後に開催された臨時株主総会では、株主の圧倒的多数の賛成により石田雅文氏の解任議案が可決され、新たな取締役が選任されました。  

抗告人は、この経緯から、本件会社更生申立ては企業再建を目的としたものではなく、株主による経営陣交代を阻止し、現経営陣の支配権を維持するために利用されたものであると主張しています。  

抗告人が求める裁判所の判断

石田ゆかり氏は東京高等裁判所に対し、

  1. 会社更生手続開始決定を取り消すこと
  2. 会社更生手続開始申立てを棄却すること
  3. 費用を申立人側の負担とすること

を求めています。  

編集部注記

本記事は令和8年6月8日付で提出された抗告理由書の内容を要約したものです。記載内容は抗告人側の主張に基づくものであり、事実認定や法的評価については今後の裁判所の判断によって確定されるものではありません。  

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